2010年BASELでCITIZEN傘下のBULOVAからとんでもないモデルが発表された。
通常のクォーツの8倍の水晶振動数を持ち、年差10秒以内、スィープ・セコンドで
価格は2万〜10万円以下、という驚愕モデル。
現状では北米のみでの発売だが、このモデル(キャリバー)が世界を席巻する日は近い。
クォーツ時計の基準を塗り替える画期的なモデルであることは間違いない。
『時計オヤジ』にとって2010年最大級のBIG NEWSである。(2011/01/01)
(年差±10秒、スイープ運針のドリーム・ウォッチの登場だ〜) 筆者が長年待ち望んだ時計、と言って過言では無い。 クォーツ製でスイープ運針の時計は20年ほど前にセイコーSPRITシリーズで存在した。確か2〜3万円クラスの時計であったと記憶する。当時、シチズンのクラブ・ラメールがやや上の対抗馬に存在していたが、何故かそれ以来、消えうせてしまったクォーツ製スイープ運針。現在、SDでは存在するが不思議と腕時計ではSD以外では商品化されていない。今や、安物掛け時計でさえ、スイープ運針は主流に近い位置付けにある。980円の掛け時計でもスイープ運針がある。シチズンでは更にスイープに留まることなく、ステップ運針という数秒ごとにスゥ〜、と秒針が進むキャリバーまで開発している。そんなシチズンが2007年10月に正式に買収発表したアメリカの老舗時計会社BULOVAから、満を持してと言うべきか、とんでもない新型キャリバー搭載シリーズが2010年BASELで発表になった。 不思議にそんな画期的キャリバーをマスコミも大々的に報じることは無い。 筆者が知ったのはWebChronosのSNSサイトを通じての11月。早速、ネットで探しまくりようやく入手したのが12月初のこと。モデルはPrecisionisitシリーズのCLAREMONT。一目見て茶色のこのモデルが気に入った。現在は北米のみでの販売であり、どうやら他地域への展開は考えていないようで、ネット上でも販売先は北米限定の表示が目立つ。しかし、そこは『蛇の道はヘビ』。こうして実際に入手出来たことは、『時計オヤジ』としては素直に感謝しつつ喜んでいるところだ。 以下、入手直後のCLAREMONTについて具体的に寸評を加える。 (⇒右写真: パネライ真っ青のケース径44mmは大迫力〜) BULOVAのHPでも単価が真っ先に表示されているのがアメリカらしい。 定価US$299である。昨今の円高を考慮しても僅か25,000円程度の時計であることを肝に銘じなければならないが、価格倍以上の値打ち感、満足度は正直ある。 文字盤は4ピース構造で凹凸を上手く利用し、ギョシェ(当然機械式によるスタンプ加工)まで施されている『複雑系』。 このアラビア数字書体といい、その配置処理といい、デザイナーの勝利がこの時計には見事に宿っている。シガーブラウン、とでも言うべき茶色の発色も美しい。 ケース左右部分がややせり上がった形状で、風防のクリスタル・ミネラルガラスも絶妙に湾曲している。 針は正直、ショボイ。クォーツ製故の軽さを追求した結果の薄っぺらさが露骨に見えてしまうのだが、それでも一応夜光処理が施されている。長針が周囲のINDEXまで届いていない寸足らず感はあるのだが、それはスイス製高級時計でも言える事なので贅沢は言うまい。 (⇒右写真: ケース径44mmは致命的にデカ過ぎる〜) 香港製の安価なカーフ・クロコ型押しベルトは、それなりの出来栄え。 時計本体とのマッチングは凡庸な仕上がりとなっている。 22/20mm幅は44mmケース径を支えるには標準的なサイズだろう。 まぁ、ベルトは黒色でも似合うのだが暫くはオリジナルのコイツを使うつもりだ。色目としては文字盤と革ベルトが良くあっている。 それにしても44mm径は流石に大きい。 ケース厚はそれ程でもないので、文字盤の表面積だけがやけに目立つが、40mm径程度に押さえる自己抑制がデザイン的には求められる。そうすることでもう少々、凝縮感を生み出せたのがこの点だけが残念。デカ厚時計ってやつは、ともするとそれだけでお馬鹿さんに見えてしまう部類であるので、気品(全体バランス)と美しさ(仕上げ)をどこで保てるかが勝負。この点だけが残念。 (⇒右写真: 美錠にはBULOVAマーク入り〜) 一応、メーカーロゴ入りの美錠ではあるが、作りそのものはチープ。 革ベルトの遊革、定革の幅も狭く、こちらもチープな作りだ。 定価US$299の時計に作りこみの良さを求めることが出来ないのは百も承知であるが、それも工夫次第。例えば、美錠の肉厚を増す、小穴のストッパーを1mm太くする、定革・遊革の幅を2mmづつ増すだけで、ガラリと雰囲気は改善されるはず。このままでは1年使えば遊革・定革のどちらかが切れてしまうことは必然・・・。こういうリサーチってメーカーはしないのだろうか??? |
(↓下写真: 裏蓋とベルト部分はごくごく普通の安価時計となる〜) 写真の通り、裏蓋は可もなく不可もないハメコミ式。 革ベルトの幅は22/20mmで、44mmのケース径にとってはごくごく標準的なサイズだろう。牛革・型押しの典型的なストラップであり高級感は一切ない。スティッチ糸の太さも表裏側ともにやや細めで、力感に欠ける。まぁ、2万円台の時計だからこれ以上望むのは無理がある。だからこそ、もっと全体的に質感を上げて、ワングレード上のクラスでデビューしても良かったのだが、この点が返す返す本当に惜しいなぁ〜。 |
(実はスイープ運針とは異なる1/16ステップ運針である〜) 手首に乗っけるとこんな感じだ。 44mm径の面積が嫌がおう無く強調されるサイズはデカ過ぎ。 実はSEIKOのスプリングドライブのようなスイープ運針ではない。 チチチっと動く高速細切れ運針は毎秒16ステップで運針している。 ちょっと見はスイープなのだが、よ〜く見るとチチチの動きが良く分かる。それはそれで良い。少なくとも1秒1ステップの動きだけは避けられた喜びがある。 『時計オヤジ』の好みとしては1秒1運針では、止まっている1秒の『間』が恐ろしく長く感じる。故に個人的好みからは機械式と言えどもデッドビートセコンドは真っ平御免。1秒運針は昔のグランドファーザーだけで十分である。願わくば、この世の全クォーツ時計がこのBULOVAの新型キャリバーに変わって欲しいくらいである。 通常のクォーツキャリバーの水晶振動数は32,768KHz。それがこのモデルでは8倍の262,144KHzにまで高められている。どうして8倍なのか、2倍ではなく10倍でもなく8倍なのか。更に言えば水晶の振動数はどこまで高めることが出来るのか。そうした疑問と期待が入り混じる、『時計オヤジ』にとっては実に不思議なキャリバーであるのだ。 |
(Precisionist 雑感〜) 日本では『エコドライブ戦略+電波主流』であり、CITIZENとしては今更電池式には戻れないのだろうか? いやいや、そんなことはあるまい。 ザ・シチズンのクォーツ・クロノマスターでさえ電池式。このBULOVAでも電池寿命は3年間あるのだから、機械式のOVH期間と略互角。コストパフォーマンスを考えればダントツに電池式クォーツの方が有利。勿論、比較の対象には本来ならないのであるが、BULOVAの親会社であるCITIZENには声を大にしてお願いしたい。 是非ともこのキャリバーを搭載した質感のあるごくごく普通の高級時計を開発して頂きたい。時計市場が成熟しきった今だからこそ、スイープと年差±10秒を武器に、全世界市場での勝負に挑んで欲しい。 元来、この種の高性能キャリバーは『薄利多売』で展開する必要性は全く無く、『高利少売』するべきもの。年差10秒キャリバーを陳腐化させない為にも、メーカーの販売戦略には再考が必要ではあるまいか。 兎にも角にも、BULOVA以外のCITIZENブランドにおいても、この高性能キャリバーをベースとした更なる商品展開に期待したい。久々にそんな気持ちが湧き起こるBULOVAのPrecisionistであるのだ。(2011/01/01) ⇒⇒⇒腕時計に戻る |
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