999.9の眼鏡、 モンブラン万年筆のボエム、 フランクミュラーのマスターバンカー、 G.アルマーニのコロン、そして、 ダブルモンクはウィングチップ同様に『時計&靴オヤジ』の大のお気に入りである・・・。 |
(悦楽のWモンク・ストラップ・シューズ〜) 腕時計同様、靴の世界にもその素性にかかわる数々の逸話を持つモデルがある。 例えば筆者愛用のWING-TIPにあるメダリオンは、装飾性のみならず、水はけを良くする為に考案されたとか、またモンク・ストラップはその昔に欧州の僧侶が好んで履いたモデルにルーツを持つとか・・・。このダブル・モンク・ストラップ、通称Wモンクも、かのウィンザー公がジョンロブJohn Lobbに発注したことに由来すると言われる。よって、本家本元はJohn Lobb製の"WILLIAM"ということになるが、最近では各ブランドよりも同様なモデルがリリースされている。いわば、従来はROLEXサブマリーナのみがダイバーズウォッチの王様として君臨していたところに、クォーツ製やらダイバークロノやらと競合各社が入り乱れて市場を発展させている状況、とでも言えようか。 そんなムードに乗ってか堂かは分からぬが、2004年秋、ジャーパニーズ・ビジネスマンの強い味方であるREGALよりもW・モンクが発表された。価格¥29,400(税込)はREGALの中でも中〜高級ラインにある。細かい所まで工夫のあとが見られるのは日本製の所以とでも言うべきか。 従来型のシングルモンクには余り興味を持たなかったが、Wモンクに対してはいつの日からか強い憧れを抱くようになっていた。恐らくその最大の理由は、今までに無かった(少なくとも一般的ではなかった)ダブルバックル部分のデザイン処理と、折りしもロングノーズのブームに乗った全体のデザインの新味性、に尽きるであろう。靴の命は勿論、履き心地ではあるが、それ以前に全体から醸し出されるデザインの美しさが最大の魅力である、と『靴オヤジ』は感じている。 腕時計の世界と同様に、靴の世界においても輸入品、外国ブランド重視の傾向があるが、このREGALは大量生産品という点を差し引いても中々どうして、及第点のデザイン・仕上がりと感じている。 (主要外国ブランドのWモンクシューズを垣間見ると〜) 本場欧州では、流石に素晴らしいデザインの靴が多い。Wモンクも数多くのブランドから、傑作品がリリースされている。筆者の嗜好に照らし合わせて、数品を選定してみた: ←左写真: 香港空港でみかけたJohn LobbのW・モンク。 これが本家本元、オリジナルである。右側茶色がウィリアムス(HK$6,600)。左側黒色がナシュビーNaseby(HK$8,730)である。価格は2004年8月時点。 オリジナルの”ウィリアム”の発祥時期は、冒頭で述べたようにウィンザー公が発注した1930〜40年頃と推定されている。一文字のトゥ・キャップにダブルストラップ、というのがそのルーツであるようだ。今回のREGALモデルも同様な意匠を踏襲しているのが分かる。 流石にJohn Lobb製モデルは、可也がっしりとした作りと感じる。手間隙かかってます、ということは素人でも感じるだろう。 ←左写真: ミラノでみかけたChurch'sのW・モンク”GEORGE”。545ユーロ(=2005年1月時点)。 こちらもフロント部分が一文字のデザイン。ウィリアムがやや、チゼルトゥ気味とすれば、Church'sの方はぽってりとしたかなりのラウンドトゥである。チャーチらしい極めてオーソドックスな作り、ややボテっとした雰囲気である。時代・流行を超えた普遍性を感じる。チャーチファンには嬉しいモデルだろう。 ←左写真: 同じくミラノで見かけたTANINO CRISTIのWモンク。460ユーロ(=2005年1月時点)。 ミラノに本店を持つTANINO(通称タニクリ)も負けじとWモンクを作っている。一文字はない。チゼル気味のプレーントゥだ。タニクリらしい革の柔らかさは折り紙付き。右側の濃茶は、アンティーク処理をしたかのようにブラウンの発色が美しい。TANINOらしい、気品さ、繊細さを感じる名品と思う。タニクリの良さは吸い付くような革のなめしとその履き心地にある。REGALの次に外国品でWモンクをと言われれば、迷うことなくこのタニクリを選ぶであろう。 ⇒右写真: 2004年7月、ウィーンで見かけたK&K?ブランドのWモンク。当時、290ユーロ。 黒に近い濃茶の一文字モデル。世界的にWモンクはブームであり、スーツの本切羽同様に、後ろ側のストラップをはずして履く人も多い。しかし、このWモンクはやはり全てのストラップをキッチリと締めることを筆者は勧める。全てのお洒落は足元から。『はずし』は他の小物でやって頂きたい。洒落と下品は紙一重であるのだから。 ←左写真: 2005年3月。筆者在住地のアクセサリーSHOPで偶然見つけたステファノ・ビSTEFANO-BI。1990年創業と歴史は浅いが、創業者はご存知ステファノ・ブランキーニStefanoBranchini。品質は折り紙付きである。 まさか、まさか中東の砂漠の街でステファノ・ビに巡り合えるとは。灯台もと暗し、とはこのことか。アンティーク調の薄茶色と黒色で、トゥにメダリオンが装飾されたWモンクはややスクエア張って、いかにも頑丈そう。ダブルモンクストラップの間隔もやや狭めで筆者好みである。 加えて驚いたのではその値段。セールにて何と7割引!邦貨にして約¥18,000.也。思わず2足とも買いに走るが、生憎筆者のサイズはSOLD-OUT。何とも残念至極の発見であった。 ←左写真: こちらもイタリアの名門モレスキーMoreschiから。 極めてオーソドックスなラウンドトゥを持つプレーンなダブルモンク。 これがプレーン・トゥであればごく普通の靴となるがダブルモンクというところが隠し味となる。 ダブルモンクのベロア部分は一枚革であることが何より重要。 ここが継ぎ接ぎ革の靴はかなりグレードが下がるか、若しくは本格派からは程遠いうわべだけの靴である。異論、反論もあるだろうが靴オヤジはあくまで『一枚革』に拘るのだ。 2006/10/7追記 (⇒ ロンドンのチャーチ直営店で販売されているチーニーCHEANY) 創業は1886年というこちらも老舗。チャーチと同様に現在ではプラダグループに属しているのがチャーチ店舗でも販売されている理由だ。 このダブルモンクは、アンティーク調のブラウンで革の仕上げに味がある。つま先は独特なややスクエア調、ダブルバックルも長く伸びた個性的なデザインだ。@£205程度と比較的お手頃ではあるが、バックルベルトの処理が筆者の嗜好とはやや異なる。今回、最後まで迷ったモデルの一つ。2005年7月、ロンドンで発見。2006年9月時点では店頭からはずれたのが残念。) (このREGALのWモンクは力作である〜) Wストラップの最大の利点は、靴紐式(特に外羽根式)のように紐が解けない、緩みが少ないことである。モンクストラップ金具部分はゴムベルトに装着してあるので、多少は伸縮する。これが足の動きによりフィットする。更に、甲の上部まで『タン』とWモンクのカバーレザーがくるので、足首を包む様な履き心地が楽しめる。但し、革質はキップ素材kipskinということもあり、やや硬めに感じるが勿論、ガラスのような硬さではないので問題はなかろう。 片足の重量は510グラム。 経験上、理想の重量バランスは片足500〜600グラムである。この重さが一番歩行に向いている。重厚感を感じるSTANDARDな靴であれば、尚更その重さが適度な振り子となり歩行の手伝いをしてくれる。 ←左写真: 靴底は革製だが、トゥの部分はゴム製である。滑り止めと耐摩耗の効果がある。土踏まず部分は緩やかに絞り込まれている(=ベヴェル・ウェイストbevel-waist方式)。そして、お決まりのGoodyear製法ゆえに、長年の修理、それもREGALであれば純正パーツによる新品同様の修理・復活が期待できるのが心強い。 つま先のデザインは若干のスクエア。ラウンド&スクエアとでも言うべきか。ワイズはEE。中々の力作デザインと気に入っている。『国産は駄目、外国製が一番』、という無意味なヒエラルキーとはそろそろ別離すべきだ。 ⇒右写真: 最近のREGALに良く見られるデザインのトゥ部分に注目。 つま先がかなり上向きにUPしている。右上の横からの写真でもわかるように、日本人の足型、歩行癖を研究した新型のラストは、歩き易さに優れている。『トゥ・スプリング』が効いたこのラスト(木型)がロングノーズのデザインを更に強調している。 (Wモンクの用途は無限大?〜) 『靴オヤジ』のワードローブにおいて、このWモンクシューズの存在価値は極めて高いものがある。 Wモンクはスーツのみならず、ジーンズにも似合う。冠婚葬祭でWING-TIPを履くわけには行かない。 従来であればプレーントゥしか使えない状況でも、この黒Wモンクであれば見た目はストレート・チップにしか見えないので大丈夫。チラ見せのバックルがアクセントとなり、お洒落にひねり度も加わり、自己満足を堪能出来る筈だ。但し、バックルの色が金色であれば不祝儀には向かない。 Wモンクの引き締まったデザイン、ロングノーズ、トゥスプリング&ベヴェル・ウェイスト、日本人の為のラスト(木型)、そして半永久的な修理サービス体制を享受出来る、というのが最大の利点だ。 REGALのWモンクはなかなかどうして、文句も少ない、侮れないモデルである。(2005/3/12) (参考文献) 『メンズクラブ ドルソ』No.22 2004-SUMMER (アシェット婦人画報社) 『最高級靴読本Vol.2』 (世界文化社) (2005/3/12 20,000hit Anniversary Edition) (2005/3/19 STEFANO-BIを加筆) (2006/1/7 MORESCHIを加筆) (2006/10/7 CHEANYを加筆) ⇒ 靴のページに戻る |
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