Rochester Shoe Tree Co.  ロチェスター・シュートゥリー・カンパニー

『Shoe Treeの考察』




靴のメインテナンス上、必携の小道具と言えばShoe Treeである。
これを使うと使わないとでは、靴の寿命も、はたまた見栄え自体も大きく異なる。
今回は靴の保管上、なくてはならない名脇役”Shoe Tree”についての考察を加える。
(2012/09/15 450000)





(一挙に13本を纏め買いする 〜)

この2年間で新たに購入した靴は平均すると毎月1足のペースかそれ以上。カジュアル用からビジネス用まで我ながらよくぞ買い込んだものだ・・・
そうなると必要になるのが、靴に見合ったShoe Tree。
今回は地元のFLORSHEIM販売店で、極めてリーズナブルな価格で発見したので、一挙に13本を大人買いすることに。こうした『買い付け』はストレス発散にもなり、気持ち良いものである。

Shoe Treeの呼び名は、日本ではShoe Keeperが双璧。英語ではその他にShoe Shaperとも呼ばれるが、ここでは素材を問わず”Shoe Tree”で統一する。









FLORSHEIMは米国老舗靴メーカーであって、Shoe Treeを自社生産する靴メーカーは皆無、と言って良かろう。
このFLORSHEIMのShoe Treeもご他聞にもれず、専用メーカーであるRochester Shoe Tree Co.によるOEM製品であるが、今回は米国本国での価格とほぼ同じレベルで購入できたのが嬉しい点。価格に誘われ、大人買いに至ったのがもう一つの理由でもある。

(←左写真)FLORSHEIMのShoe TreeにはOEMの刻印がシッカリと読み取れる。













(FLORSHEIMでは4種類のShoe Treeを揃える 〜)


FLORSHEIM製は米国産のレッドシダー(=赤杉こと米杉)が材料であり、その独特のアロマと軽さが有名。吸湿性も加味すると、この材質がベストと考えている。

⇒右写真、左から:
#525 先割れ、ヒールカップ部分も形状保管に役立つ
#505 手元は木製だが、先割れではない
#565 先割れ、手元はプラスチック製だがグリップし易い
#515 手元はプラ製、先割れではない


#525の価格が2千円程度、#565・515が約1300円だから、日本国内の価格を考えれば破格、といってよかろう。





理想の形状は#525である。
つま先部分は先割れ方式で、バネの力でつま先側が両側に伸びるデザイン。ほぼ全ての靴に対応できる万能型である。
個人的にはヒール部分に脱着用の金具がある方が便利で好みであるのだが、この価格では文句は言えない。それ以上に、新品レッドシダーのアロマが強烈に香ばしく、これだけでも価値あるShoe Treeではないかと思っている。このモデルは他にも多くの靴メーカーが採用する機能も優れた人気Treeである。ロングノーズであろうと、カントリーシューズであろうと、ほぼ万能に使いこなせる。

取っ手の材質は木製の方が好ましいのだが、今回はプラスティック製も選択した。軽量であること、脱着がよりスムーズに行えることが魅力であるのだが、この辺は予算と好み次第であろう。どちらを選択してもFLORSHEIM製はつま先部分の木製の大きさが十分にあるので、その機能面では遜色は無いが、ベストは断然、#525である。


























(今回は、重要な裏方でもあるShoe Tree各種についても考察を〜)

←右写真: 一般的な廉価Shoe Tree。
プラスティック製、木製のもの。旅行用にはこうした軽量モデルが重宝する。プラスティック製であれ、あるとなしでは大違い。靴を休ませる時は、人間の枕と同じで必ずShoe Treeを装着してやることが靴への思いやりである。

右端の木製Treeは12年前にドバイのIKEAで購入したもの。必ず一つは家にあるであろう、広く普及している木製廉価版Tree。GILCOブランドが特に有名である。
プラスティック製はまず壊れることがないタフな製品であるが、部分破損も有り得るので、あくまで旅行用やスニーカー用とするのが正しい使い方であろう。基本は、Shoe Treeとはその名の通り、『木製』であることが原則。











(⇒右写真)
こちらはイタリア・ミラノ製のプラスティック素材であるが、ユニークなのは取っ手部分を回転させることで前後にスライドして長さ調整が出来る点。

とは言え、やはり吸湿性や耐久性においては木製に軍配が上がる。こちらもあくまで旅行用、応急用のShoe Treeと心得るべきである。
それにしても全体のデザインは非常に面白い。ここまでフロント部分を大きくしてあるTreeもプラスティックでは珍しい。
流石、ミラノ・デザインとでも言うべきか。











(J.M.Weston純正のShoe Treeも一つの理想モデルである〜)


J.M.WestonもOEM製品であるが、良く出来ている。
靴のサイズ毎にピタリとはまるTreeなので、靴購入時にShoeTreeも同時購入するのが正解。
中心のバネ棒は写真の通り2本型であり、安定感、耐久性により優れる。つま先が先割れするが、靴のラスト(木型)にほぼピタリと同調するので、型崩れ防止には絶大なる威力を発揮する。しかし、純正でなくとも、上述FLORSHEIMの#525のようなモデルであれば、他社製品でも何等遜色は無い。予算やデザイン、各自の嗜好に合わせてShoe Treeを選択すれば宜しい。

少々、細部の話になるが本来は中心のバネ棒は前後に伸ばすネの力に集中するべきである。先割れ部分を押し出す力もこの中心のバネ棒に頼るとなると、バネ棒の役割は2つになり、負担が増す。結果、バネ棒のトラブルにも通じる。本来はJ.M.Westonのように、2本のバネ棒を使うことでより前後へ拡張する力を強化し、そして先割れ部分は別の小さなバネを利用することで各機能を独立分担する方式は真に理に適っている。逆に、上述した#525のように、1本のバネ棒が前後に伸ばす力と、先割れ部分を左右に拡張する力との2つの機能を兼用する方式は、バネ棒にかかる負担やジョイントの増加によって故障する確率も高いのである。

※余談だが先日、JMWの店員と話したところでは、近年のJMWによるShoe Treeの品質が落ちていると嘆いていた。その形状は新旧ともに大きな変化は無いのだが、最大の問題は材質であり、中々コストに見合ったJMWが要求するレベルの材料が調達できていないとのことだ。筆者にはそこまでの詳細は理解出来ないものの、現状のShoe Treeでさえ可也の高品質と感じているのだが堂であろうか・・・。



























(⇒右写真: BALLY製の2本は勿論、OEM製品 〜)

こちらも非常に使い勝手の良いモデル。
取っ手部分がグリップの良い木製である。特に右側の先割れタイプは理想的。最低でもこのクラスのモデルを揃えたいところ。

材質はレッドシダーのようなアロマはないが、如何にも吸湿性に優れた感じがする。Shoe Treeもたまには陰干しするなどの配慮が必要であるが、筆者の場合、保管する時はシューバッグに入れたり、薄手のポリ袋に包んで保管している。日本国内であれば防カビ対策は重要な点であるが、現在生活する場では通年、湿度30%以下なのでその心配は皆無であるが、逆に乾燥からくる静電気により砂埃やチリを吸い寄せるので、こうしたポリ袋で包むことは大きなメリットがあるのだ。











(←左写真)

こちらは英国TRICKER'SのOEMである。
木製だが、艶消しの塗装が施されているようだ。
靴のラストに合わせたビスポークのような形状はより本格的。
リング式金具も使い易い。
このTreeはシングルモンク用であるが、これもTRICKER'Sで同時購入したもの。靴同様に、Shoe Treeへの投資を惜しんではいけない。












(Shoe Tree抜きには靴の保管は考えられない 〜)

右写真は3者3様のTreeを使用した例。
この組み合わせはどの靴で行っても問題はない。真ん中の茶色TreeはPolo Ralph Lauren製、右端は台湾製であるが、こうした踵部分の接地面がラウンドして大きいTreeは靴への負担も少なく、ヒール部分の形状維持という観点からも最適な効果を果たしてくれる。

Shoe Treeのデザインはまだまだ沢山ある。
金属製もあれば、ダンボール製、はたまた新聞紙を丸めて詰めて、割り箸でつっかえ棒とするのも一種のTreeの役割を果たす。
甲革を伸ばすのみならず、靴底の革を伸ばす役割も大きい。
靴の形状維持と吸湿効果が最大の役割であるこのShoe Tree、靴を見ればShoe Treeが使われているか否かは直ぐに分かる。良く手入れされている靴ほど、年月を経るに従い明らかに表情が豊かになる。そしてその人の靴への愛情、身だしなみへの配慮も容易に図り知ることが出来るのだ。どんな靴であれ工夫を凝らしてShoe Treeを最大限に使いこなすことが、ひいては靴の寿命と美しさの維持・向上につながることは論を待たない。

靴磨き同様に、好きな靴と好きなShoe Treeの組み合わせを考えるのも、また楽しい一時であるのだ。
(2012/09/15 450,000)


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加筆修正: 2012/9/18, 2012/11/3

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