HIELD   ヒールド

HIELD Castanga "Off Set" 3Tie-Shoe
HIELD "Penny Loafer" X-Stitch Un-Lined




1922年創業、英国のヒールド。
と聞いてもピンと来る御仁は少なかろう。
ロンドンはサヴィル・ロウに店舗を構える老舗生地メーカーである。
ここのオリジナル・OEMシューズが凄い。
上写真のヒールの6本ビス留めにはこれだけで仰天してしまうド迫力靴なのである・・・。
(2012/7/01 439200) 




(超ド迫力のヒール・デザイン 〜)

初めてこの靴と遭遇したのが2011年7月。
ちょうど、今から一年前になる。オフ・セットされた3アイレット・プレーン・トゥ、と言っても良かろう。イタリアン・デザインを連想させるが、この靴は歴とした英国製。上質なカーフ製ということもあり、足入れ感はとてもしなやかで快適。ややロングノーズに感じるが、3アイレットによる視覚的影響も大きい。履き心地は抜群。ノーザンプトンのどこかのメーカーOEMだと察するが、その造りは繊細で抜かりが無い。マスコミでもてはやされるメジャー級ブランドと伍して引けを取らないのがHIELDの看板を背負う意地とみる。

数年前にブームともなったオフ・セットされたシューレース位置は使い勝手は今ひとつであるが、そのデザイン的なインパクトは絶大。クセモノを気取りたい気分の日には打ってつけの選択である。しかし、基本はトラッド、Good Year製法に則り、シャンクはJ.M.Westonの#598同様にブナ材を使用するという手の込みよう。見えないところまで気合が入った靴、と賛辞を並べても決してオーバーではない。






(この靴ほど、靴底が気になるモデルも既製靴では存在しない 〜 )


←左写真の通り、靴底は黒色と茶色に塗り分けられた半カラス仕上げ。ヒドゥン仕上げで糸目は見えないところもドレッシー。写真の通り、カラス仕上げと靴内部の内張りが同じ黒色というのも中々渋い。これはあくまで本人にしか分からぬ隠れた愉悦であるのだが、こうした独り占め満足感こそ靴の醍醐味、と言って良かろう。時計も靴も同じであるが、人様に見せびらかして楽しむというのはなんとも幼稚。自分にしか理解出来ない秘め事であるからこそ、そこに深淵なる楽しみが存在するのである。

そして何よりもヒールデザインが凄い。
冒頭拡大写真の通り、ヒールに6本もの大型ビスが使われている。一年前に初めて見た時の衝撃と感動は未だに薄れることは無い。そしてヒールにはブランド・イニシアルである”H”文字が模られている。この靴ほど、靴底に色香を感じさせるモデルは今まで観たことがない。
単なるカラスでもない。単なる高級靴でもない。そこには明確なるHIELDとしての自己主張が滲み出ているではないか。

オフ・セット3アイレットと共に、この6本ボルト+半カラス仕上げという全くの『想定外』のデザインに、完全にしてやられた、と手放しで賞賛してしまう。








(こちらはその名も”Weekender"というSuede Model 〜)

こちらの焦げ茶スウェード製ペニーローファーも素晴らしい。
ヒールにはお家芸の6本ボルトと”H”マークが、そしてドライビング・シューズを彷彿とさせるゴム製突起と馬蹄形のゴムライニングが如何にも週末靴、であることを主張する。その名の通り、Weekenderにピタリであろう。

確か70〜80年代にウィークエンダーなる夜の事件簿TV番組があったが、こちらのWeekenderには品格と優雅さが漂う。ややスクエアっぽく見えるが実際はラウンド・トゥのロングノーズ気味であるが、靴底を見ても分かる通り、その過激に絞り込まれていない適度なラインがギリギリ英国製の面目を保つ。そして、Xステッチと呼ばれる赤糸で3つのXマークが一際目を引く。コバの糸はオレンジっぽい紅色という細やかな芸も流石である。
このHIELDの靴デザイナーのセンスは超一流クラスと言っても良いだろう。分かる人にはたまらないデザインの塊である。










(純英国靴でこのデザインは通常は有り得ない 〜)


個人的好みから言えば、赤色Xスチッチは蛇足。
やはり、ハーフサドル式のPenny Loaferタイプのようなクラシックなデザインが好み。とは言え、この靴はあくまで名前の通り週末靴なので、多少なりとも遊び心を加えたいというデザイナーの思惑は理解できる。

全体的なデザインはイタリア靴のモード系ラインにある。3次元で観る全ての造形美から色香を放っているのが、良くある英国製ローファーとは一線を画す。これでも正真正銘の英国製、というところがノーザンプトンの底力というか時代のテイストを導入した結果であろう。英国製老舗ブランドには難しい取り組みを、HIELDは自社ブランドのOEMを通じて見事にやってのけた。

この靴のデザイナーには心より敬服と賞賛の念を抱かざるを得ない。
(2012/7/01掲載 439200)







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