L.L. BEAN   L.L.ビーン

L.L. BEAN - MAINE HUNTING SHOE Ref.3154G 10"


 
Copyright(C)1977-2005 ILLUSTRATED BY ”CHOIGARE-OYAJI”



(今年で28年目を迎えるL.L.BEANメイン・ハンティング・シューズ〜)
1977年に購入した、『元祖』ハンティングシューズのL.L.BEANである。
当時はL.L.BEANは勿論、ノースフェイスNORTH FACEもシェラデザインSIERRA DESIGNも日本には進出していない時代である。インターネットもe-mailも存在しない時代だ。購入する為には、まずは本国アメリカへ自分で手紙を書き、カタログを取り寄せる。そして、郵便為替を同封してORDERするという、いわば個人輸入の魁(さきがけ)を地で行く方法しかなかった。
そうして28年前に入手したのがこのハンティングシューズである。

(『ヘビアイ党宣言』のマストアイテム〜)
当時の日本には、今では当たり前のダウン・ジャケットも、デイ・パックDAY PACKも存在しない。折からのヘビーデューティーHeavy Dutyブームの煽りもあり、こうした自然回帰を歌い文句にするアメリカ文化への関心が急激に高まる時代でもあった。雑誌『POPEYE』が創刊されたのもそんな当時の1976年。

1976年9月号の月刊誌『メンズクラブ』において、イラストレーターであり、アメリカ自然&カジュアル文化の伝道者でもある小林康彦氏提唱の『ヘビアイ党宣言』が掲載された。当時、甚く感動した記憶がある。『ヘビアイ党』とは、ヘビーデューティー・アイビーHeavy-Duty Ivy志向を意味する。従来の東海岸アイビーリーグ・ファッションをベースに、数々のアウトドア・ワードローブを加えた『新概念』である。アメリカでもこの頃から『ホールアースカタログ』(Whole Earth Catalogue)に代表されるように、自然回帰ブームやら、エコ活動への関心が社会的に広まって来た矢先。そうした波に乗り、日本でも瞬く間に浸透していったのが『ヘビアイ』ファッションであったのだ。

シェラ・デザインの60/40マウンテンパーカ、JanSportsのバックパック、そしてこのL.L.BEANのハンティングシューズが、当時の筆者が憧れを抱いたアメカジ『御三家』でもあった。



(ラバーと頑丈な牛革で縫い合わされた『ヘビアイ・ブーツ』〜)
L.L.BEANのオリジンは、1911年にメイン州フリーポートFreeportでレオン・レオンウッド・ビーンが開発した手製のハンティングブーツに遡る。この大ヒットで翌年1912年には正式にL.L.BEANが創立される。以来、通信販売という販売方法で拡大を続けて今日に至っている。このメイン・ハンティング・シューズは、当時の風貌と構造を基本的に受け継いでいる大ベストセラーである。


背面は右写真のような独特な『逆Y字型』の革で補強されている。
タンは内側に縫いこまれ、水や泥の浸入を完全に防ぐ。L.L.BEANの本拠地であるメイン州ではこうしたブーツが実用品として重宝されていたのだが、この無骨なハンティングシューズにはたまらないアメリカの匂いと憧れを感じたものである。

L.L.BEANの売れ筋商品であるハンティングシューズには、浅めのモカシン・タイプからこの10インチのものやら、12インチ版まで幅広い商品展開がある。このモデルは10インチタイプで、鳩目は8個。濃茶に見える部分から下はゴム製。通気性という点では今ひとつであるが、もともとは湿地帯等で使われる環境が前提ゆえ、ゴム仕様というのは必然にして当然の選択であったのだ。



(そのチェーン・トレッドは最大のセールスポイント〜)
この靴の全体のデザインもさることながら、靴底のゴム製チェーン・トレッドはトレードマークともなっている。この後、数々の模造品やら類似品が出たことからも、この靴の与えた影響力が想像できる。

天然ゴムと思われるこのゴムは非常に柔らかい。いわゆる「食いつき」が良い、というタイプであり、磨耗すれば本国では靴底交換も可能であるのだ。アッパーの牛革はグローブ製で、これまた頑丈。野球のグローブと同じ質感だ。ミンクオイルを十分染み込ませることで、ある程度の防水性も確保できる。




(⇒左側の写真)
踵部分に付けられたゴム製のタグ。
このタグには1970年代当時のアメリカ文化への筆者の夢と憧れが詰まっている。そしてその魅力とは今日のカジュアル・ファッションの源泉として脈絡と流れ、受け継がれているのである。

(⇒右側の写真)
ブーツ内側のロゴは、写真にあるような筆記体である。現在のモデルには、ロゴ意匠も独自にリファインされた活字体に変更されている。






(日本でこの靴を履くOCCASIONは何?という最大の疑問が〜)
さて、独り感慨に耽っている「ちょい枯れオヤジ」であるが、ハンティングをするでもなく、湿地帯を歩くでもないとすると、一体どのような場面occasionでこの靴を履きこなせるのか?

勿論、カジュアル専用となるが、用途としては
@雨の日、雪の日に
A車に積んでキャンピング時に
B釣りや河川への遊びのお供に
Cバイクでの使用時に
D築地やアメ横への買い物時に
E潮干狩り用に
F渋谷辺りで肩に担いで、アメカジを気取る
G長めのタイト・ジーンズの裾からラバー部分だけを見せるように履き、エルキュール・ポワロ式にクラシックに足元を気取る???
というところであろうか。

実用面での頻繁な出番を求めるのであれば、デッキシューズタイプの浅底モデルがお薦めである。しかし、筆者にとってこの靴の意義は『実用半分、ヘビアイへの憧れ半分』であるので、どうしてもoriginality溢れる8インチ以上でなければ満足できない。因みにこのシューズはハトメ8個の10インチモデルである。


            *     *     *     *     *


冒頭の1977年当時の筆者作イラストにある通り、当時の価格はUS$29.00+$9.00(=AIR-PARCEL代)。
為替は@¥267/$の時代であった。
今年28歳になるこのL.L.BEANは、まだまだ現役。頑強なることこの上ない、タフなブーツである。



(参考文献)
「モノ・マガジン」1995年通巻300号記念特大号 (ワールドフォトプレス刊)

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