(2010年6月28日、『巨星落つ』〜) SWATCH Groupの総統、Nicolas G.Hayek(以下、Hayek爺さん)が執務中に心不全で急逝したとのニュースには全世界が衝撃を受けた。スイス本国でも大きな波紋を起こした巨人の死。現在のスイス高級時計業界復興の最大の立役者と言っても過言ではない。時に競合グループのリシュモンや、独立系老舗PATEKなどにもあからさまに牙をも剥く稀代のオピニンリーダーでもあった実業家の逝去に対しては、いち時計愛好家として心より哀悼の意を捧げたい。 そんなSwatchからHayek爺さんの肖像を『パズル・モーション』にした時計が発売されているとは知らなかった。 たまたま店頭で発見したのが今年の年初。勿論、即買となったのだが、てっきり爺さんの追悼モデルかと思いきや、何と2008年の春夏モデルで1,000本の限定らしいことを後に知る。最近、Swatchからトンと離れてしまい、疎くなっている自分も知る。 現在、Swatchのケースサイズの多様化展開には久々に見て驚くほどだ。 44mmクラスからこのモデルのような38mm、そしてそれ以下のサイズも勿論、数種類のケースサイズが揃えられていることに時代の変遷と現在のトレンドを感じてしまう。 (←左写真) これがHayek爺さんをモチーフとしたモデル。 一般的にはN.G.Hayekと聞いても殆どの人が誰だか知らないだろう。逆に時計好きなら知らぬ人間はいないのだが、若者相手に販売強化を推進するSwatchにHayek爺さんを『搭載』しても、果たしてどの程度のユーザーに訴求できるのか非常に興味があるというか、疑問でもある。 しかし『時計オヤジ』にしてみれば、訃報の後に接したモデルだけに、一際心打たれるナニカをこ時計から感じてしまった。 多分、一生、自身のコレクションの1本に加えるであろう、記念碑的なモデルとなったのだ。 プラスティック製のストラップには爺さんの写真とフルネームもプリントされているが、勿論色気も無ければ何の特徴も無い。キワモノ時計と言えばそれまで・・・。。 |
(8枚の円盤が回転することで意外性を生み出すパズル・モーション〜) 何時の間にやら登場していたのもパズル・モーション。 実は2007年8月に登場したのだが、『時計オヤジ』がその存在を知ったのは2009年であった。 1時間に1回だけ、毎時正午に秘められたデザインが文字盤上に登場するという画期的なアイデアには、今でも新鮮な驚きと賞賛を惜しまない。そんなパズル・モーションにHayek爺さんが登場となっては、それも逝去後に知ったこともあり、瞬時に躊躇なく購入決定となる。 (⇒右写真1) こんな感じで毎時正午を過ぎると文字盤は何のデザインか分からなくなるところが良い。まるで、デッサン状態、キャンバスに下絵を作成しているようなシュールな色合いも良い。 (⇒右写真2) 正午5分前でもまだこんな感じでモチーフの正体が分からない。 回転ディスク4枚であればこれ程までにバラバラ感が生まれない。 敢えてデザイン柄の全面をカバーするディスク8枚を使った点が英断。 そして8枚ディスクと2本の時針をクォーツ電池で動かしてしまう省エネ技術にも恐れ入ってしまうのだ。こんな大きな?駆動エネルギーがあるのであれば、時針をもっと極太にして存在感を増すこともクォーツ時計では出来るのであるまいか。(⇒従来、クォーツでは太い針は動かせないとばかり言われているけど、本当かな・・・) (⇒右写真3) ようやく現れた爺さんの肖像。 筆者の固体ではキッチリと肖像が完成するのは毎時5分頃でチョイとずれるが、まぁご愛嬌。 Swatch帝国の経営を引き継いだJr.Hayekもこの時計を巻いているのだろうか? ★ ★ ★ ★ ★ 個人的にはこれからもこの時計を眺めながら、1980年代以降のスイス機械式時計の復興と隆盛やら、2000年代のバブル期の混乱と消滅、そしてこれからの機械式時計の未来について、自分の人生と重ね合わせながら思いを巡らせたいと感じているのだ。(2011/1/22) 345900 ⇒ 腕時計のページに戻る |
※掲載の写真・文章等の全てのコンテンツの無断転載・無断複写を禁じます。 ※特に金銭絡みのオークション説明等へのリンク貼りは厳禁です。 |