MARK McNAIRY    マーク・マクナイリー

BROWN TWO TONE SADDLE GIBSON
PRODUCT NO.8564T "EINSTEIN"




ダブルモンク、ウィングチップ、ストレートチップ、ギリーシューズ、そして
クラシカルなサドルシューズが筆者好みの『デザイン5天王』である。
特にダークカラー系サドルシューズは、現実的には極めてレアな存在。
そんな中、偶然、雑誌で見かけたこのモデル。
外羽根式である点も珍しいが、このカラーリングが素晴らしい。
筆者の目指すモデルはあくまでドレスシューズだが、この新作シューズは如何に?(2009/08/30)



(珍しい外羽根式サドルシューズ〜)

こと靴に関してはブランドについて拘らない。
このMARK McNAIRYというブランドは、元J.Pressのデザイナーである氏が立ち上げた自身の新ブランドだそうだ。
J.Pressと言えば日本の提携先であるオンワード樫山が本家を飲み込んでしまった形になるが、New Yorkerと並びスーツの世界では日本のトラッドの双璧。筆者が最も好むスーツブランドである。そのJ.Pressデザイナーによる靴だから、という理由は全く無いのだが、このサドルシューズのデザインは大変興味深い。


デザインとしての最大の特徴は、
@ やや赤味を帯びた濃茶と黒というダークカラーのバランスの良さ
A 珍しい4つ穴式で外羽根式であること
B ダイナイトソールを使用した頑強靴であること、
に集約される。

一見してトレンドを追わないトラッド靴であることが分かる。
ハトメの穴は通常奇数がバランス上、好ましい。4穴というのは中途半端。加えて外羽根式は良いのだが、タンに相当する部分がサドルの黒ではなく、アッパー本体と同色というのも気になるところ。もっと言えば、ラウンドトゥのデザインもぽってりとして、どちらかと言えばワークブーツ系に近い。筆者の求めているのはあくまでドレスシューズとしてのサドルシューズであるので、この頑強デザインでは少々、厳しいかなと言うのが率直な印象。







(可也ポッテリしたラウンド・トゥが好みの分岐点となる〜)

靴であればまずは、楽チンな履き心地を求める。
靴の木型に自分の足型が慣れるまで、足を痛めてまで我慢して履く気は毛頭無い。何故なら、そうした儀式を経た結果、靴が自分の足にフィットする保証は何も無いのだから、最初から極力、無理の無いサイズを選ぶのが経験上の結論でもある。

この靴はその点、ワイズもゆとりがあり、つま先部分のデザインも高さ、幅ともにやや大味なラウンド・トゥであるので心配はなさそうであるが、問題は逆にシャープさが犠牲となっている点。これに尽きる。

写真ではわからないが、実際に履いてみるとドレス系シューズとは一線を画するのが強く感じられる。イメージとしてはジーンズに、カントリー調のジャケットが一番似合う組み合わせかも知れないが、スーツではちょっと重たくなりそうなのが最大の懸念点。








(本家ダイナイト・ソールの迫力は十二分〜)

左写真の通り、本格的なダイナイトソールを起用している点も嬉しい。Good Year式でもあるので、全天候性対応靴、とでも言えようか。アッパー素材のカーフ製スコッチグレインの色だし加減さも絶妙。サドル部分共に、この発色は抜群の出来栄えである。

惜しむらくはタンの部分もサドル革同様の黒色にして欲しかった。
そして、ハトメも5穴とするべきだろう。イメージ的にはトリッカーズ路線にあるのだが、もう少々、ドレスラインにベクトルを振っても良かったと考える。何故なら、その方が汎用性がグッと広がり、使えるシチュエーションの広がり、ユーザー層にも厚みを増すことが出来るからだ。このデザインでは、可也ニッチなユーザー層を対象とすることになる。

そんなマーケティング的思考はさておき自分自身が楽しめるか否かに基軸を置けば、ある程度の汎用性は確保出来ると感じている。問題は、上述の通りラウンド・トゥのポッテリ感が少々、度を越している点である。





(一目瞭然。シャープさよりも質実剛健路線にあるデザイン〜)

実際に履いてみると右写真のイメージである。
筆者は大体、26cmの靴が適合サイズであるが、この靴ではUS表示で9が相当する。ワイズは3E並みなので、比較的容易にサイズ選びは出来る。ダイナイト・ソールはかなり固めだが、安定感は抜群。気取らず、ガシガシ履ける靴としては問題ない。

この種、ダークカラー系のサドルシューズではREGAL TOKYOからも発売されているが、それ以外では一部の英国靴に限定される。極めてレアなデザイン、かつカラーリングであるが、こうした靴はファッションやトレンドとして扱うべきではなく、定番商品として息の長い商品展開をすべきである。それが出来るブランドであれば、諸手を上げて、他のデザインの靴でも間違いないと断言出来よう。

尚、このモデルには”EINSTEIN”というサブネームが施されているが、どうして『アインシュタイン』が登場してくるのか少々、不思議である。(2009/08/30)





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